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遺言書が無い場合、民法は法定相続人とその相続割合について定めています。
しかし、これは目安としての分数的割合ですので、具体的な財産を誰が相続するかについては、相続人全員による「遺産分割協議」で決定すると定めており、法定相続分と異なる遺産相続を実現するには、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成が不可欠となっています。
他にも次のような理由により協議書が必要となります。
<遺産分割協議書の作成理由>
1.協議の成立を証明し、後日の紛争を防止する目的 2.登記手続きの登記原因証明情報として必要 3.銀行預金を相続した場合の払戻しに必要 4.相続税の申告に必要 |
相続人として未成年の子とその親権者がいる場合、両者は遺産分割において利害が対立することになります。
そこで、このような場合には、必ず、その未成年の子の特別代理人を選任することが必要になります。
特別代理人の選任手続きは、親族などの中で適任者を特別代理人候補者に推薦したうえで、子の住所地を管轄する家庭裁判所に選任の申立てを行い、家庭裁判所が特別代理人の選任審判を行うことになります。
相続人の中で認知症の家族がいる場合には、遺産分割協議の前に、成年後見人選任の申立をするなどして、認知症の方の代理人となる後見人等を選任することが必要になります。
遺産分割協議という重要な財産に関する決め事に、認知症の方を含めて行うのは、どうしても不公平な内容の遺産分割になってしまう恐れがあるためです。
このように認知症などで判断能力が乏しいのにも関わらず後見人等を選任せずに行った遺産分割協議は、無効になったり取消しの対象になったりしますので注意が必要です。
遺産分割協議に際して、相続人の中に行方不明の方がいる場合も、手続きが必要になります。
まず家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を申立て、財産管理人を選任します。
さらにこの財産管理人が、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することで遺産を分割することができます。
ただ、遺産分割協議の内容につき、「権限外行為許可の申立」を行い、この許可を得てはじめて遺産分割協議が有効に成立することになります。
また、不在者の生死も不明で、7年以上の期間が経過している場合には、失踪宣告を家庭裁判所に申立てる方法があります。
この場合、家庭裁判所の失踪宣告の審判により、失踪期間の7年経過時において、死亡したものとみなされますので、相続人から除外されることになります。
ただこの方法は、相続人の順位に変動が生じたり、代襲相続が発生したりする可能性もあり、問題を複雑にするケースがありますので、注意が必要です。
当事務所では、遺産分割協議の前に必要となる諸手続についてのご相談をお受けしております。
初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
相続人全員の出席のもと、誰が、何を相続するのかを決めていきます。
民法は、相続人の年齢、職業、心身状態、生活状況その他一切の事情を考慮してこれをする旨の抽象的な基準の規定があるのみです(民法906条)。
相続人の一部の者のみで行った協議は無効になりますので、注意が必要です。
ただし、相続人全員が一堂に会することが不可能な場合、書面の持ち回りによる遺産分割協議も判例により認められています。
「遺産分割協議書」には、決まった様式はありませんが、誰が何を相続するのかがはっきりわかるように記載し、相続人全員が署名・実印を押印して印鑑証明書を添付します。
不備がありますと、その後の名義変更手続きなどで、思わぬ足止めを食ってしまうこともありますので注意が必要です。
遺産分割協議にもいろいろな方法があります。
具体的にどのような方法で遺産分割をすればよいのでしょうか。
遺産分割の原則的な分割方法で、土地・建物は妻に、預金は長男になどと、具体的に決めていく方法です。
しかし、分数の割合どおりにうまく具体的な遺産割り当てを行うのは、ことのほか大変です。
例えば、主な財産が家のみ、というケースは多くありますが、このような場合、家を現実に分割することはまず不可能です。
そのような場合は、換価分割や、代償分割という方法があり、実際に多く用いられている分割方法です。
1人または一部の相続人がその不動産を相続する代わりに、その部分の代償となる金銭を他の相続人に支払う方法です。
ただし、この方法の場合、代償金を支払う人が現金などを持っている必要があり、現実的には困難を強いる場合もあります。
銀行から借り入れをして代償金を支払ったという例もあるくらいです。
不動産をはじめ、相続財産を売却して、売却金を相続人で分配する、という方法です。
この方法ですと、各相続人に十分な手持ち現金が無くとも、売却金の分配ができるのがメリットです。
ただ、不動産の売却の場合ですと、実家を失うことになったり、不動産の売却益に対して、譲渡所得税が課税されたり、あるいは、買い手がつかず長期間売れなかったり、といったデメリットもあります。
<分割方法の比較>
方 法 | 長 所 | 短 所 | |
---|---|---|---|
現物分割 | 個々の財産をそのまま相続人に分配する | わかりやすい 財産現物を残せる |
相続分どおりに分配することが難しい |
代償分割 | 一部の相続人に財産を与え、他の相続人に対し金銭を支払う債務を負わせる | 公平な遺産分割が可能 財産現物を残せる |
債務を負担する相続人に支払能力がないと不可能 |
換価分割 | 財産を売却などして金銭に換えて各相続人に分配する | 公平な遺産分割が可能 | 売却の手間と費用がかかる 財産現物が残らない 譲渡益に対し所得税及び住民税がかかる |
共有分割 | 数人の相続人で持ち分を定めて共有する | 公平な遺産分割が可能 財産現物を残せる |
利用や処分の自由度が低い 共有者に次の相続が起こると権利関係が複雑化する |
相続人の中で、結婚資金や事業資金といった名目で、生前に被相続人から贈与を受けていた人がいた場合、「特別受益者」として、その人の相続額が差し引かれます。
また、相続人の中で、被相続人の介護をするなど、特別の貢献をした人がいた場合、「寄与分」として、その人の相続額を増加させることができます。
故人より生前贈与を受けている相続人と、生前贈与を受けていない相続人とが全く同じ相続分だとすれば、不公平に思う人もいるかもしれません。
そこで、生前贈与を受けている相続人は、「特別受益」として相続分から差し引かれることがあります。
特別受益になる贈与は、次のようなものです。
1.婚姻や養子縁組のための贈与 新居の費用や結納金、新婚旅行費用などです。 2.生計資本としての贈与 大学の学費、住宅取得費用、事業資金などです。 3.遺贈(遺言によって受ける贈与のこと) 遺贈であればすべて特別受益となります。 |
また、生前に多くの特別受益を受けている相続人によっては、計算の結果、今回の取得分がマイナス(つまりもらいすぎ)になることもあります。
その場合でも、原則として、もらいすぎの部分は返還しなくてもよいことになっています。
生前の本人との関わりは、人それぞれです。
本人の生前に本人の財産維持や財産増加に対して貢献した相続人は、本人に寄与したということで「寄与分」が認められることもあります。
本人の事業や農業を継続して手伝っていた相続人や、本人を長年看護した相続人、本人に財産を贈与した相続人などがこれにあてはまります。
ただし、単なる家事労働だけでは、寄与分として認められないとされています。
寄与分は遺産分割の対象となる相続財産には含まれず、寄与した相続人は相続財産からまず寄与分を取得して、残った部分を法定相続分でわけるということになります。
具体的に寄与分がいくらになるのかということは、誰が決めるのでしょうか。
実際に寄与がどれくらいあったのか、ということは亡くなった本人にしかわからないことが多く、他の相続人から見れば、寄与分とは思えないこともあります。
そのようなことも考慮して、寄与分がどのくらいになるのかということは、相続人全員の協議によって決めることになっています。
ただ、存命中の本人との関わりや思い入れはそれぞれ個人によって異なり、各自主観的に寄与の度合いを判断するために、寄与分の合意ができないということも多くあります。
何度話し合っても一向に協議が成立しない場合には、最終的には家庭裁判所へ寄与分を定める審判を申立て、その席にて決着をつけることになります。
遺産分割が法定相続分どおりにきちんとわけられることは、実際には少ないと思っていただく必要があります。
それは、不動産やその他の動産のように、わけられないものほど価値の高い遺産だったりするためです。
自分の相続分に固執するあまり、大事な親族のきずなまで失うことになっては目も当てられません。
相続で得る財産など、元々はなかったも同然なのですから、ここは相続人同士の譲り合いの精神で、遺産分割協議に臨むよう、肝に銘じていただければと思います。
本人と同居、あるいは財産管理を行っていた親族が遺産を隠しているのではないか、という他の親族の疑いの気持ちが遺産分割協議でもめてしまう一つの原因になってしまうことがあります。
遺産の内容を口頭で説明するのみで終わらせてしまうことにより、他の相続人がこのような疑念を持ってしまうのではないかと思われます。
たとえ親族同士とはいえ、本人と同居していたあるいは本人の財産を事実上管理する立場にあった相続人は、他の親族に聞かれる前に財産を証拠書類とともに相続人の前でオープンにするくらいの気構えをもつことが、円満な遺産分割協議のための重要なポイントです。
当事務所では、遺産分割協議における相続人間の連絡・調整、遺産分割協議への立会い、遺産分割協議書の作成など、遺産分割時に必要となる事項について、ご相談をお受けしております。
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